理不尽な税務調査

 

 

2023年5月10日

 

ここ数年、当事務所が関与している顧問先に対する税務調査は全てと言っていいほど“消費税還付”に関するものです。

当事務所では2016年(平成28年)から私が考案した“サブリース方式”によってアパート、マンションの居住用建物について約240件消費税の還付を実現してきました。

 

どのような仕組みかというと、消費税法第6条(非課税)別表第13号において「貸付けに係る契約において居住の用に供することが明らかな場合に限り、家賃が非課税になる」と規定されており、建物のオーナーである個人が法人を設立し個人法人間のサブリースである賃貸借契約書において“居住用及び事業用を問わない”という使用用途を明記することで消費税の課税仕入を「個別対応方式」で事業用家賃のみに対する課税仕入として全額仕入控除の対象にするやり方です。

 

居住用に建設された物件の部屋をネイルサロンや学習塾など事業用に賃貸することもあります。

賃貸不動産のオーナーの気持ちになって考えて下さい。大手不動産のサブリース会社が居住用のみに限って募集し、そのアパート、マンションの入居者のすべてが居住用に使用していても、将来にわたって居住用のみに限って貸し続けるでしょうか?サブリース期間が終了するか途中でもサブリースができない何らかの事情が発生したらどうしますか?使用用途は事務所や店舗に貸すこともやむを得ないし、門戸を広げることで他物件との差別化が図れることは間違いありません。この物件の一生は次の代が考えることにもなるでしょう。よって節税と相続対策を兼ねて同族法人を設立し、居住用、事業用を問わずに貸すことを賃貸借契約書等に明記し、いわば家訓的に“変化に対応”することを子や孫に対して明言しておくのです。

 

令和2年3月迄の消費税法(以下旧法という)では契約で課税非課税を判定するので居住用家賃であっても、自ら課税売上家賃を認識し、消費税を還付してもらうのですから当然、その後消費税の申告と納税を行います。令和2年4月以後の消費税法(以下新法という)では、状況により非課税家賃か否かを判断することになったので以後は非課税の家賃として申告納税をしなくてよくなっていますが...ところが税務署は4年位前からぽつぽつと税務調査を行い、大半は申告是認となりましたが、同じやり方なのに、個別事案と称して1年以上の期間をかけて、サブリース会社や建設会社に反面調査を行い、否認する案件がでてきました。

この場合の問題点は還付申告後2カ月位でいったん還付していること、その後1~3年たってから税務調査になり、否認された場合、修正申告に応じても更正されても還付金の返金(平均1,000万円位)と加算税(約15%)延滞税(年利3%台)を加えて納税しなければならなくなることです。全て加えると1,200万円位になります。

 

税務署は還付加算金(利息相当年利3%台)の支払を減らすため書類を審査することで一旦還付してくるのです。

納税者は還付されたら、還付金を使ってもいいと思い使ってしまいます。その後2~3年たってから本格的な税務調査になるのですから、たまったものではありません。

 

還付申告件数240件の約半数が税務調査になり、大半が否認されました。この場合、修正申告するか税務署長の更正を待つかの二択になります。

税務調査の結果、修正申告しても、加算税、延滞税がつきます。更正の場合と変わらないのです。おまけに「不服審査」や「裁判で訴訟」をする権利がなくなるのです。税務署はすんなり終了する修正申告をすすめてきます。この場合、多少の“えさ”をぶら下げたりします。例えば修正申告してくれるならば、駐車場分は共通対応ではなく課税売上対応にしてもよいとして、いくらか返金額を減らす交渉をしてくるのです。

当事務所の方針としては間違っていないし多額の返金をできないので、税務署に対する“再調査の請求”を行います。これで約半年を要します。この間に還付金を返金し、加算税、延滞税を支払わないと延滞税は年利9%台に増加し、督促がきて差押えに移行するため、できるだけ支払いをせざるを得ません。当事務所も成功報酬を返還し、加算税、延滞税を負担してあげますが、それでも80%は納税者負担でほとんどを使いきってしまっているため支払いは容易ではありません。換価の猶予などの申請も行います。

 

いわれのない加算税、延滞税をむりやりに課していることで国は不当利得を得ているうえに、新法を旧法に遡求適用することで憲法84条(租税法律主義)に反し、憲法29条(財産権)の侵害を行っています。また、関東信越不服審判所までが、居住の用に供していることが明らかであるか否かを「当該貸付けに係る契約書の契約条項だけでなく、当該契約締結に至る経緯をはじめ、建物の種類、用途や関連する契約の定め等の諸般の事情を総合考慮して判断するのが相当である」としてまさに節操がなく改正後の状況を示して納税者の訴えを棄却しました。

最近の税務署は「再調査の請求」に対して納税者と同族法人との間の“使用用途を納税者の内面の心理を契約書に表現することまで踏みこんで束縛するということでなりふり構わず居住用及び事業用を問わない”とする賃貸借契約書を作為的だとして、仮装隠蔽として重加算税まで賦課することにまで増長するようになりました。憲法21条「表現の自由」を蹂躙する大暴挙です。

納税者の皆様ととりやま財産経営はやむを得ず「再調査の請求」、「不服審査」「裁判による訴訟」により納税者の基本的人権を守るため国税側と徹底的に闘っていきます。

 

尚、この件で一担還付しておきながら長期に亘る税務調査とその結果、全く納得がいかない微税返金と加算税、延滞税により納税者の生活は破壊され、その心労に至っては図りしれません。たまに無礼な言動をする税務職員もいます。その際には憲法16条“請願権”を請願書により行使していますが全く反応がないなど、不誠実きわまりない対応で怒りが涌いてきます。これがわが国日本の現実です。

せめて裁判所には良識を示して欲しいものです。

以上、理不尽な税務調査の実態を表してきましたがこのような事例はほんの一部であると思いますが、税務調査の最前線で我々と対峙する税務職員は上から命令されてやってくるのであり、その上層部(税務署長や国税局国税庁の幹部)に責任があるのですが、全く会おうともせず前面に出てきません。無責任の限りです。

 

とはいえ、以上記載したことは私の私見であり、独自の観点かもしれません。

しかし、納税者の苦しみは事実です。深刻な問題が何件も発生し進行しているのです。

 

 

税理士法人 とりやま財産経営 代表 鳥山昌則

 

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